『チェロと宮沢賢治 ― ゴーシュ余聞 ―』

宮沢賢治 特集 2   
60% 「チェロと宮沢賢治 ゴーシュ余聞(表紙) 

『チェロと宮沢賢治 ― ゴーシュ余聞 ―』
(横田庄一郎著/音楽之友社)


今回は、横田庄一郎先生が書かれた『チェロと宮沢賢治 –ゴーシュ余聞-』から
チェロと宮沢賢治について書かれたエピソードを紹介させていただきます。

(この記事は、「東京ノーヴイNewsPaper 2018年1月号」に掲載した記事を元にしています)




2018年2月1日~4日『銀河鉄道の夜』上演。詳細はこちら
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』



こいづぁ、おれのカガ(妻)だもの
宮澤賢治 画像(1) チェロの音色をこよなく愛した宮沢賢治(PublicDomain)


チェロの音色をこよなく愛した宮沢賢治。こんなエピソードが残っています。

「ある時、賢治の伯母ヤスが、「お前は早く嫁をもらえ」と膝をつかまえるようにしてキツク迫ったことがあったとき、賢治は、愛用のチェロを持ち出して、いかにもかわいらしくて堪らないというようにチェロを抱き、ポロンポロンと鳴らし、「こいづぁ、おれのカガ(妻)だもの」と言ったので、とうとう二人で顔を見合わせて大笑いしたことがあった。」




独学で学んだチェロ

この時代、チェロはまだそれほど普及していませんでした。
そして東京音楽学校が『西洋音楽講座』の開講を始め、その中で、1925年から、チェロ奏法についての講座が始まります。この本が、当時、一般の日本人が手にすることができた、ほとんど唯一のチェロ奏法についての本でした。
賢治は、これを購読、独学で学びました。

翌1926年に、賢治はチェロを購入します。(実は、賢治が購入したチェロは、当時の最高級品です。)

そして賢治はチェロを勉強するために上京を決意します。
意気込んで上京した賢治のチェロの先生は、当時、結成されたばかりの新交響楽団(現NHK交響楽団)のトロンボーン奏者でチェロもたしなんだ大津三郎(1892-1957)でした。

とは言えチェロのレッスンは、新交響楽団のメンバーがいきなりやってきた青年に時間をさいて教えられるほど簡単なものではなかったようです

賢治のチェロ(著作権状態不明) 宮沢賢治愛用のチェロと、妹トシのバイオリン
(宮沢賢治記念館)



三日間のレッスン

賢治にチェロを教えた大津さんは、戦後1952(昭和27)年、雑誌『音楽之友』1月号に『私の生徒 宮沢賢治 ― 三日間セロを教えた話 ―』という手記を発表しています。
ある日、大津さんは、当時、自分達が稽古場で借りていたビルのオーナー塚本氏に呼びとめられて、こんな相談を受けます。

「『三日間でセロの手ほどきをして貰いたいと云う人が来ているが、どの先生もとても出来ない相談だと云って、とりあってくれない。

岩手県の農学校の先生とかで、とても真面目そうな青年ですがね。無理なことだと云っても中々熱心で、しまいには楽器の持ち方だけでもよいと云うのですよ。何とか三日間だけ見てあげて下さいよ。』と口説かれた。…(中略)

塚本氏の熱心さに負けて遂に口説き落された私が紹介されたのは、三十歳位の五分刈り頭で薄茶色の背広の青年で、塚本氏が『やっと承知して貰いました大津先生です』と云うと、

『宮澤と申します、大層無理なことをお願い致しまして…』と柔和そうな微笑をする。『どうも見当もつかない事ですがね、やって見ましょう』と微苦笑で答えて、扨(さて)、二人の相談で出来上がったレッスンの予定は、毎朝6時半から8時半までの2時間ずつ計6時間と云う型破りであった。…(中略)

三日目には、それでも30分早くやめて、たった3日間の師弟ではあったが、お別れの茶話会をやった。その時初めて、どうしてこんな無理なことを思い立ったか、と訊ねたら『エスペラントの詩を書きたいので、朗誦伴奏にと思ってオルガンを自習しましたが、どうもオルガンよりセロの方がよいように思いますので…』との事だった。

(ここで、詩人の宮沢賢治を知らなかった大津さんは、『詩をお書きですか、私も詩は大好きで、こんなものを書いたこともあります』と軍楽隊員時代に書いた自作の詩を賢治に見せます)

今日の名声を持った宮沢賢治だったら、いくら人見知りしない私でも、まさか自作の詩らしいものを見せる度胸はなかっただろうが、私はこのとき詩人としての彼を全く知らなかったのだ。」





チェロと セロ、どう違うの?

賢治のチェロに対する愛着が、名作『セロ弾きのゴーシュ』に集結しました。
でも、なぜ「セロ弾き」なの? ゴーシュが弾いているあの楽器は、
「チェロ」じゃないの?

実は、日本にチェロが入ってきた当時、
チェロ(cello)は「セロ」という名称で紹介されていました。
(ただし「チェロ」という表記も併用されていたようです。)

戦後になって、「チェロ」に統一されたのですが、
やっぱりゴーシュは「セロ弾き」ですよね
(「チェロ弾きのゴーシュ」じゃちょっと…!)
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