ちょっとした話 29

29『ある日の、三時間…冷や汗…』


震災後、久々の公演。
本番前に、一幕だけ、通し稽古をやることになりました。

面倒くさがりの私は、正直「え゛ー」と思っておりました。

ところが!

んまぁ~、セリフを思い出すので手一杯!

「スタニスラフスキー・システムとは…」なーんて語るどころじゃございやせん。


タイムリミットは三時間!
たぶん、ほとんどの役者が想像する(であろう)、あの悪夢……「自分のせいで、この芝居がダメになる…かも…。」ってヤツ。
ひゃ~~、ひぇ~、ひょ~、その事態が目の前に!
3時間後に!!

「こりゃ~いかん!どうしよう!」
内心あわてふためき、真っ青。


アニシモフ氏いわく、
「芸術は、それを正しく行わない者に復讐する。」
…まったくその通り。
演劇芸術に、怠慢と慢心は許されないのです。


三時間で何が出来るか、必死で考えました。


いつも、どんな調律をしてただろう…んー、なんだっけ?混乱してる。

「落ち着こう、とりあえず深呼吸。」
深くゆっくり吐いて~、吸う、ゆっくり吐いて~、吸う……
…いか~~ん!これだけじゃ解決しない!!

具体的に何をすればいいのか!?


その三時間のことを、思い出してみます。


①まず、自分の現状をうけいれる。
…見栄やプライドが邪魔をして、なかなか素直に自分の゛ダメダメ゛さを認められないものです。
ダメな理由を自分の外に見つけたり、言い訳を探したり…。

②台本に立ち還る。
…この場面は《どんな状況》なのか。
《何を》《何のために》やっているのか…。
…《誰と》《何を》《なぜ》しゃべっているのか。
戯曲のラインから離れて答えを見つけようとすると、必ずや、後になって矛盾に悩まされます。

③眼だけを動かす(私の場合)。
…眼を見開き、眼だけをあちこち動かして、周りを見る。
これなに?と思うでしょうが、どんな効果があるか、よかったら一度やってみてください。
大切なのは、見えたものをしっかり捉え、観察・認識すること。


④《交流》について。
…自分はこれから、ここにいるみんなと、そして舞台では、目の前にいる生きた相手の考えや気持ちと《交流》するんだという、当たり前のことを言い聞かせました。


そうしたら①に戻って、《謙虚な気持ち》を失っている《現状》に気づきました。
認めざるを得ない。「ヤバい、オレってぜんぜん゛ダメダメ゛じゃん。」
セリフどころか、戯曲のことも、システムで学んだことも、なんにも準備が出来てない!


というわけで、再び②③④…と巡り巡っているうちに、戯曲に新しい発見をしたりして、なんだかちょっと面白くなってきて、ご褒美なのか《キャラクターの種》が降りてきたりして。
(この、面白くなるというのが大事なんですなぁ…きっと)


三時間をざっとまとめると、

☆戯曲に立ち返ること。
☆スタニスラフスキー・システムを、正しく活用すること。
☆謙虚さを取り戻すこと。
…だったのでしょう。


アニシモフ氏いわく、
「俳優が、いかに怠けたがりの性質を持っているか、よ~く知っています(笑)。」

…はぁー、御明察。


日々の努力(ほんの少しずつでよいのです)を忘れた者には、いかなる奇跡も訪れない。
そして《謙虚な心》で。
…すぐに失くしちゃうんです。まったく、自分の器の小ささを思い知らされます…。


今回は(も)、つくづくスタニスラフスキー・システムに感謝……そして、反省…………。


では、また…

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私たちは、ロシア功労芸術家のレオニード・アニシモフを芸術監督に迎え、ギリシャ悲劇からチェーホフにいたる、古典作品から厳選したレパートリーを上演しています

平成27年3月27日、東京都より「認定NPO法人」として認定されました。


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